No.619「夕立(ゆうだち)」「マコ様の大冒険」「仕事運」

2021.08.21.No.619

「 夕立(ゆうだち) 」

なな.

 パラパラと葉っぱをたたく音。また雨が降っている。カンカン照りだと文句を言うくせに、雨続きだとこんな夏の日差しが恋しくなってくる。なんて我儘なんだ。 このところの雨続きでうんざりし、晴れて太陽がさんさんと輝いた日には思わずカメラを向けてしまった。「やっぱリ日本の夏は暑くないと。」なんて思いながら。 

 最近思い出すのが夕立だ。『夕立』という夏の夕方に降る通り雨を指す言葉をすっかり聞かなくなった。バーッと降ってさっと上がる。洗濯物を慌てて取りこむ姿、肩をすぼめて濡れながら家路を急ぐ子供たち。降りやんだ後のモワッとした湿気を含んだ空気の匂い。それらを家の窓越しに見ている子供の自分。そして空にかかる虹。大人たちは夕立が来るとその後涼しくなると言っていたが、ますます湿気を含む空気が嫌いだった。夕立の、夏の思い出。ずーっと前の。。。 

 昨今はゲリラ豪雨と言われている夏の通り雨。夕立はその中に埋もれてしまったようだ。夕立という言葉が消えてしまいそうで寂しい。

 歳?なのかも? 


「 マコ様の大冒険 」        

高 志 

 猫の”マコ様”が我が家にやって来て、1年が過ぎた。生後2ヶ月弱でやって来てから1年。すっかり我が家に心を許してくれたようで、人でいう大の字になって寝ることも稀ではない。 

 そして、あれだけ警戒していた外への冒険も、ついに大きな一歩を踏み出した。2階のベランダから庭の松の木に渡してある板をつたい、離れの屋根に飛び乗って、そこから違う木に飛び乗って下へ降りる。 

 それなら、最初の松の木から下に降りれば良さそうなものだが、そこは”マコ様”のこだわり。頑なにそのルートを守り、帰って来る時も逆のルートを辿ってくる。 

 降り始めた頃は、少し時間が経つと心配して迎えに行ったものだが、今では帰って来るまでほったらかしだ。それでも最初の頃は庭を中心に散歩をしていたのだが、最近ではどこまで足を延ばしているのか定かではない。一応、首輪に鈴を着けているので、動くと何処にいるかはわかるのだが、時たま何処かに首輪を落として来ることもあるので要注意だ。 

 外への散歩を憶えた頃は、『私を、外に出せ!!』とばかりに鳴いていたのだが、そのうち自分で網戸を開けることを憶えてしまい、そうなると開けっ放しで出ていってしまうため、網戸に付けられる猫用の小さなドアを購入した。 

 しかし、警戒心の強い”マコ様”は、そのドアを怖がって自分では通ろうとしない。猫用のドアなのに人が開けてやらないと通らないなんて、とんだお貴族様だ。 

 それでも、すっかり外への冒険が楽しくなってしまった”マコ様”は、1日中帰って来ないことも珍しくなくなった。そうなると、外でお友達に出会わないのだろうかと思っていたら、この間遂に近所の飼い猫と接近遭遇しているところを発見した。 

 我が家にやって来た頃、離れていた兄弟と数日我が家で過ごすことがあったのだが、その時でさえ威嚇の態勢を崩さず殺気立っていたので、外で見知らぬ猫と出くわしたら、さぞや大騒ぎになるのだろうと冷や冷やしていたが、少し声を上げたものの、それほど大騒ぎするには至らなかったので、ホッとした。 

 相手が大人だったのもあるのかもしれないが、ゴロゴロと馴れ合うことはないものの、威嚇し合うこともなく、ある一定の距離を保ちながら、うちの”マコ様”が後を追っかけていた。 

 我が家に隣接する幼稚園が夏休みであるため、園庭の遊具が格好の遊び場になっている。その場所に、近所の猫も遊びに来たのだが、間もなくして幼稚園が始まると、次は何処で落ち合うことになるのだろか? 

 すっかり外猫になった”マコ様”だが、停滞前線のせいで気温が下がった時には、途端に家で過ごすことが多くなった。降り続く雨も嫌なのだろうが、それよりも寒いのが苦手なようだ。停滞前線が北上し、青空が戻って気温が上がると、ぴゅーっと外へ出かけてしまった。 

 梅雨明けから8月上旬までの重たい空気から、秋を思わせる心地よい風が吹くようになって、季節の移ろいを感じずにはいられないが、それは”マコ様”の方が敏感に感じているようで、ますます活発に大冒険を楽しむことだろう。 

 そんな折、”マコ様”の母猫がまたもや妊娠したのではないかとの知らせが舞い込んできた。もしも産まれた際には、引き取ってもらえないかとの話しなようなのだが、果たしてどうなることやら!?確かに、1匹ではかわいそうだよな、という話は時たま話題に上がる。まあ、1匹も2匹も同じだよなという意見もあり、末っ子の進は引き取ろうよと既にノリノリだ。 

 そんなこととは露知らず、うちの”マコ様”は今日も呑気に幼稚園の園庭でくつろいでいる。次なる展開はどんなものか?兎にも角にも、楽しもう!! 


 「 仕事運 」           

マナ 

 「こう言ったら悪いねんけど、オカンは、ほんま、仕事運ないなあ」

 息子が、ほんとうに気の毒そうに言ったのでびっくりした。 

 2か月ほど前から、左右の股関節がギクシャクするなあと感じていた。昔から、自転車に乗るとそうなって、いつの間にか治っていたので、気にかけていなかった。7月14日の夕方から、左の股関節が痛くて、階段はもとより、歩くのがちょっとキツくなってきた。 

 整形外科に行くと、股関節囲む凹の骨が人より短いことがわかった。 

 普通の人が100なら70くらいだという。生まれつきで、今まで支障がなかったのは、太っていなかったらと筋肉のおかげだそうだ。6月に還暦を迎えて喜んでいた矢先のことだ。 

 急に来たなあ。というのが実感。 

私は、デパ地下でお寿司を作っては販売している。もちろん、立ち仕事で、重い舎利箱を上げ下げもしている。今後、股関節に負担のかからない生活をしていく必要がある。そして、太らないことも。 


  12年前に郵便局で月給制社員の試験に合格したものの、乳がんが再発して辞退して、落ち着いてからコンビニ店員になって、これは楽しかった。でも、お給料に釣られて事務員になって、これはつらかった。お金だけのために働くことはもう二度としないと決めた。 

 一度は好きなことを仕事にしてみたかった。損得なしに。

  好きなことを仕事してはいけない、そんな甘いことはない。という考えが頭のどっかにあった。

  向き、不向き、で決めたことはあるけど、好きで決めたことはなかった。 前提に「私にできるんやろか」という不安もあった。 

 「やってあかんかったら仕方ないけど、やらんとグジグジ言うてる時間がもったいない」 エイヤッと、寿司学校に入学して、三軒目のお店でカウンターに出られたと思いきや、左手が動かなくなり退店。

  諦めて、個人病院に勤めるが、コロナ禍で雇止めにあう。そして一年ちょっと前から、デパ地下でまたしも寿司に戻る。 

 息子に言われるのも無理ない。

 彼は20歳の新卒で就職して、28歳の今まで同じ会社に勤めている。 

 今後もそうだろう。 


  息子へ。同情しなくていい。 

 実は、お母さんは、こんな展開を楽しんでいるねんから。 

 今度はどこへ連れて行ってくれるのだろうかって。 

 病気や不具合は、自分でできない方向転換をさせてくれるチャンスやねんから。

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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