No.627「べジ・ラザニア」「寂しさは避けられないけれど」「ピェンロー」

2021.12.11.No.627

「 べジ・ラザニア 」

なな.

 以前も月替わりメニューでラザニアをやってみたことがあるのだが、なかなか準備と提供するタイミングが難しく、出しやすくするとクオリティが落ちてしまい、クオリティを上げるとキッチンがバタバタになってしまっていた。そんな理由でここ数年はできずにいた。ぶっち君がイタリアンで修業をしたと聞いた時から七菜と文は今年こそラザニアを復活できる!と楽しみにしていたのだ。

  オーブンで焼いた熱々のラザニアが出てくる。冬らしいではありませんか?! そして色もちょっとクリスマスっぽい。写真も載せればインパクトあるし、「食べたーい!」と、お客様も増えるんじゃないか?何よりも提供した時のお客様の笑顔が楽しみ。特に何度もリピートして来てくださる方々には新鮮さもあるし。

  ぶっち君のアイディアで、ホワイトソースは里芋とジャガイモの豆乳ソース。とっても美味しいです。さすがです。段取りもみんなで解決! 

 ということで、12月限定メニューのべジ・ラザニアです。 


「 寂しさは避けられないけれど 」     

高 志 

  不意に、お気に入りに登録してある水の里近辺のライブカメラ映像をチェックして見た。虫の知らせなどという物ほど心がザワついた訳では無い。ほとんど無意識のうちに見ていたというのが、的を射ている表現だろう。

  そこには、道路脇に積雪が見られる映像が流されていた。車道には積雪が見られないが、明らかに除雪をしたような様子が映し出されている。

 もう12月なのだから至って不思議では無いのだが、前回まで雪は降っても積もる程では無かったため油断していたのかもしれない。いや、油断というよりも、温暖な湘南地方で過ごすうちに失念していたようだ。 

 そう、もう冬がやって来たと水の里に滞在している際には感じていたのに、自宅に帰り日々を過ごすうちにすっかりその事が頭からこぼれ落ちていた。 

 冬の間、路面凍結が最大の懸念事項である。温暖化の影響か、近年福島県内に入っても、山道に差し掛かるまで路面凍結はほとんど無くなっている。お水採りに際し往復600km余りの道中のうち、路面凍結で気を使うのはせいぜい2、30kmのため冬用タイヤの装着は非効率だ。 

 それに、東北地方は少しの積雪でもすぐに除雪車が走ってくれるので、よほどのドカ雪が降っている最中に走らない限り、普通タイヤで走れてしまう。もちろん、急ハンドルや急ブレーキは厳禁なため、スタッドレスタイヤ装着車よりはおぼつかない運転になってしまい、先を譲ることは多々あるのだが、そこは安全運転最優先のため腹を括っている。 

 しかし、腹を括るとはいえど、やはり相当なストレスを抱えながらの運転となるため、路面状況には気をつけなければならない。 

 今は、所々にライブカメラが着いており、要所をチェックすることが出来るので随分とストレスは軽減された。今回も周辺の通りの状況をチェックし、合わせて天気予報も照らし合わせて、どうにか路面凍結は免れそうだと判断して、水の里に向かった。

  滞在期間中は、雨には降られたが雪に変わることはなかったのだが、日中でも5℃を上回ることはないほど寒かった。そんな寒さなのだから、いつ雪に変わってもおかしくないのに、つくづく運が良いと思わずにはいられない。 

 今回のお水採りの前に、防寒・防水靴を手に入れることに成功した。今まで、冬の間着るものにはどうにか防寒対策が出来ていたのだが、足下は良品にめぐり会うことは無かった。それがようやく『これは!?』という1足に出会えたのだ。まだ雪上で履いたわけではないので、雪の上でどう感じるかはわからないが、前回のお水採りまで感じていた不快感が解消されただけでも救われた思いだ。 

 今年もお水採りは残り1回となったが、どうにか無事に終えられるように祈るばかりだ。お世話になっている東北釣堀苑の今季の営業も終了してしまった。来年4月までは、寂しくなる一方だ。山肌も、空もグレートーンになってしまい、目に映る景色も寂しい。 

 冬の間、鮮やかなのは雪の白さだけだろう。それでも時折空の青さが見られたら、もうそれだけで得した気分になる。陽射しなんか降り注いだら、雪に反射して宝石のように輝くのだから、それらを見つけられた時には自然と笑みがこぼれてしまう。 

 傍から見たら、『何、あいつ1人でわらっておるんじゃ!?』と気持ち悪がられているかもしれないが、そんな些細なことに気が付き、幸せを感じられる自分が嫌いではない。 

 それに長い夜のお伴となるのは、本である。この冬はいったいどれだけの素敵な本に出会えるだろうか。冬のお水採りは、寂しさだけでは無かった。 


「  ピェンロー 」         

上田 隆 

  寒くなると白菜がおいしくなる。そのおいしい白菜を大量に食べたい。それで鍋料理で活躍してもらう。  

 めんどくさがり屋の私のレシピは簡単だ。 白菜と豚肉と塩だけを鍋にぶち込んで火を点ける。もちろん、水も。後はほったらかし。 白菜がくたくたになればいただく。塩加減がバッチリと決まればうまい。なんだか、物足りなければ醤油をとんすいに垂らすこともある。“だし”入れないなぁ~。

  この簡単鍋の起源は30数年ほど前にさかのぼる。酒飲み友だちが毎夜のように集まる店で友人Hちゃんが騒いでいる。 

 「ピェンロー 知ってるか? 妹尾河童さんがウマイ、ウマイって紹介してるんや。扁炉 と書く。白菜と豚肉と塩だけで作る中国の鍋料理なんや。河童さん曰く 貧者鍋、ええネーミングやろ」  聞いていた悪友どもが口をそろえた。

 「お前、そんだけ自慢するんやったら食わさんかい」 

 「そやそや! 耳では食われへん」 

 狭いアパートに集まった七、八人が 

 「ウマイ、ウマイ さすが中国人や、貧乏人でもこんだけの美味さを発明するんやな」 


  ピェンローの記憶は遠ざかっていった。白菜鍋を作ることがあっても、冒頭に書いたレシピ、我流になっていた。 この文章を書く前に作った白菜鍋も我流。ふっと、ピェンローの名前がよみがえった。 

  ネット検索した。

 【ピェンロー】 舞台美術家の妹尾河童さんが著書「河童のスケッチブック」で紹介した。   ピェンローの最終的な味付けは、塩と一味(七味)で各々行います。 

  鍋から自分の器にピェンローを取り分けて、自分好みの量の塩と一味(七味)。味見をして薄ければ塩を足し、塩辛くなりすぎたら鍋からスープを注ぎ足す、みたいな感じ。

  Hさんに聞いたら、干ししいたけとごま油は必須だと言う。 

しばらくして、電話をくれた。 

 「どやった?」 

 「うん アンタとこで頂いた味を思い出したよ。ありがとう。でも、我流を腹一杯食ったので少し後にするよ。」

  みなさん お試しあれ。   

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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