No.620「すすき梅雨」「秋への移り変わりと共に」「Grateful Dead“薔薇ガイコツ”とマゴットセラピー」

2021.09.04.No.620

「 すすき梅雨 」 

なな.

 日本には4つの梅雨を指す言葉があると知った。菜種梅雨、梅雨、すすき梅雨、山茶花梅雨。8月下旬から、10月上旬に続く長雨を指すのが「すすき梅雨」最近は秋の長雨と言われることが多いようだ。 

 雨雲の上には相変わらず夏の太陽が燦燦と輝いているはずなのだが、雲にさえぎられるとこんなにも急に涼しくなってしまう。季節外れだなぁと思いながら、寒い、寒いと呟きつつ家の中で着る物や寝具を工夫するが、身体がついて行かないためにまだ夏なのに真冬のような装いになってしまう。長井農園さんからは、1週間ほどお日さまが望めないので果物野菜が成長しないから発注しただけの野菜が出せなくなると連絡が来た。環境破壊の影響で異常気象がこのまま進んだら、地上にどれほどの影響が出てくるのかと、想像してみるが恐ろしくなる。 

 夏の日差しにぐったりしていた店先の植物たちは、この雨を喜んでいるようだ。 葉の上のコロコロとした雨粒が可愛くて、思わずスマホをかざした。 また暑さは戻るらしいが、これを機に朝晩は涼しくなるだろう。今年も1人1台の扇風機で夏をやり過ごした七菜家にとって秋の訪れは朗報だ。 


「 秋への移り変わりと共に 」       

高 志

 まさか月替わりでこんなにも気温が変わるなんて思いもよらなかった。一応、寒さ対策の用意はしてお水採りに向かったのだが、前日まで陽射しの下『まだまだ暑いな!!』と辟易するほどだったため、心の油断があったのだろう。 

 8月から9月に変わった途端に水の里では、低温注意報が出るほど気温が下がった。寒い、とにかく寒い。それもそのはず、水の里の気温は日中でも15℃前後しか上がらず、今年でいえば3月頃の気温なのだから、いくら用意したところで身体がついていかない。 

 かと言って、このまま気温が下がったままなのかというと、どうもそういう訳では無いらしく、今後まだまだ30℃を超える真夏日が戻ってくるというのだから、始末が悪い。 

 そんな寒暖差に翻弄されながらも、秋への移り変わりを楽しんでいる。8月のお水採りで散々悩まされたアブの襲撃もすっかりなりを潜めてくれ、山間に響き渡っていたセミの鳴き声は、秋虫の涼やかな音色にとって変わった。 

 気が付けば日没が早くなっており、作業時間が短くなって戸惑いながらも、その分増えた夜の時間を自宅では中々取りづらい読書の時間にあてている。 

 真っ暗闇の中、小さな灯りをともし、鈴虫やコオロギ、キリギリスなどの秋の虫が奏でる音色を耳にしながら小説を読む時間は、何とも贅沢なものだ。 

 もう少しして中秋の名月と重なったりしたら、月明かりだけで本を読むことだってできる。そんな素敵な時間を水の里なら体験できるのだが、哀しいかな、自宅に居るとそんな風流さの欠片も得ることが無い。 

 その代わりと言ってはなんだが、部屋中を明るく照らした電灯の下、家族の笑い声が響いているのだから、何かを得るには何かを失うと言ったところか。 

 数年前、末っ子の進を連れて水の里へ行ったとき、指を伸ばせば赤とんぼが停まってくれて、びっくりしながらも満面の笑みを浮かべていたのを思い出す。 

 今では野球小僧のため、夏休みといえどほぼ毎日野球をしているので、水の里に行くこともままならないのだが、ふとした拍子にあの時のことを『楽しかったな~!!』と言って懐かしんでいる。好きな野球を自ら選んだのだから、それ以上は何も口にしないのだが、出来ることならまた赤とんぼと戯れたいのだろう。 

 今回のお水採りでは、赤とんぼもさることながら、それよりもはるかに大きなヤンマが遊びに来てくれた。小学生の頃に憧れた”ギンヤンマ”や”オニヤンマ”よりかはひと回り小さなヤンマではあったが、水の里でもあまりお目にかかれないので、幾らか興奮してしまった。 

 相変らず、水の里の赤とんぼたちは人懐っこくて、指を伸ばさなくても肩や頭に停まってくる。それもちょっとやそっと動いても飛び立たないのだから、たいしたものだ。 水の里においては、1日を通して人と話すことなど僅かな時間だが、その代わりに自然の生き物たちとのささいな交流に癒されている。 

 何かの本で、自然と向き合っているとやさしくなると記されていたが、まさにその通りだと思えてならないことがたくさんある。 

 水の里へ通って、ただお水採りをしているだけでそう思えてくるのだから、次回から始まるキノコ狩りに出かけたら、いったいどうなってしまうのだろうとワクワクが止まらない。 

 そう、急激な気温の低下で、水の里の山々は早くも紅葉が始まり出している。ということは、いよいよキノコ狩りシーズンの幕開けなのだ。まずは、キノコの王様”マイタケ”である。シーズンの開幕とともに本丸の登場となるか、乞うご期待である。


「  Grateful Dead “薔薇ガイコツ”と マゴットセラピー 」   

上田 隆 

 持病である五十肩が寛解の兆しが無い。三十代で初めて発症してから40年近く、何度発症したことだろう。でも、時間がかかろうがいつの間にか元に戻っていたのに、今回はしつこい。やっぱり歳なんかな? それで評判の良い整体院に通いだして今日は4回目だ。 

 「今日はここへ来る前にプール歩きを一時間してきました」 

 「上田さん、それでですか。ベッドへの乗り方、軽さが見えましたよ」 

 「今日は体が楽なんです」 

 「はい、表層と深層の筋肉がベターとしていたのが、今日はやわらかいですよ」 

 先生のおかげだと思う。痛みぎりぎりの所まで施術してくれているのを感じる。奥深いところまで凝り固まっていたので、痛い施術を防衛しようとする体の緊張が心まで固くしていたようだ。 

「上田さん、ステキなTシャツですね」 

 背中のGrateful Dead “薔薇ガイコツ”が先生の目に飛び込んでいる。 

 「Wildなんですね。もちろんいい意味ですよ」 

 「息子は『かなんオヤジやなぁ』と思っていますよ。エレベーターで一緒になった見知らぬ人に話しかけたら、息子の“ギョッ”が見えました。私、前世はインド人だったようです」 

 「うちの息子も同じです。“水おかわりください”って言ったら『もうエエやん』 男の子って」  二人で笑った。 

 「上田さん、ところで歯はどうですか」 

 治療に関係あるのかな? 

 「虫歯で二本は抜きましたがブリッジです。他にも詰め物した虫歯は多数あります。あっ、歯医者さんに『自慢してください』と言われました。『実用の親知らずが奥歯の延長で真っ直ぐに生えていますよ。万人に一人でしょう』 ですって」 

 「先生、それって原始人や、って言うことでしょ」 『あっ、いや』 

  歯医者とのやりとりは思い出してもおかしい。 

 「引き換え、親父は虫歯一本もありませんでした。無類の免疫力の持ち主だったようです。戦争で眼を撃ち抜かれこめかみから抜けました。軍医もおらず、みんなが死ぬと思ったようですが、親父は自分で蛆を摘み取っていたそうです。並外れた免疫力の持ち主だったようです」 

 「あっ、蛆が助けてくれたのでしょう。食べればタンパク補給にもなったでしょう」 

  すごいこと言う先生やな。蜂の子と変わらんと言えばそうなんやがね。

  教えられたマゴットセラピー(英: Maggot therapy)を調べた。ハエの幼虫である蛆(マゴット)の食性を利用して壊死組織を除去する治療法とある。ほとんど知られていないが、大学病院で治療法に取り入れているところもあり、医療用蛆を製造する業者も存在しているそうだ。 

 幼年の頃から71歳の今日まで、父はその免疫力で助かったと信じ込んでいた。が、病原菌を持ち運んでくると思い込んでいた蛆が逆に助けてくれたとは。人生ビッグ・スリーに入る大きな驚きだ。 

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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