No.586「テイクアウトで生き延びろ!」「再会」「オンライン飲み会」「味噌つくり代行いたします」

2020.05.16.No.586

「 テイクアウトで生き延びろ! 」

なな.

 長引く自粛生活でお店はご来店のお客様が減り、どこのお店も同じだと思いますが生き残りをかけてテイクアウトに力を入れています。全国的な動きでテイクアウト用の容器は入手困難な状況になっています。そんな中地域の皆様が飲食店を応援しようと、SNSで「茅ヶ崎フードアクション」というサイトを作ってくださり、オーガニック七菜も参加し、普段いらしたことのないお客様にもご利用いただいています。

 この日はオードブルのご注文があり、知恵を絞りました。餃子の皮で器を作ったり、薄焼きのスコーンをカナッペにしたり。季節の野菜をたっぷり召上っていただきました。お誕生会とのこと、喜んでいただけたかな?


「 再 会 」

高 志

 前回のお水採りでは、ようやく桜が満開になったとはいえ、まだまだ山肌の色づきはモノトーンの枝ぶりにちっちゃな黄緑の点々が散らばる程度だったが、今回は山肌全体が若葉の薄い緑色に山桜の淡いピンク色が混じるやさしくて薄い彩りに包まれていた。

 東北釣堀苑の若旦那・とも君に連休中のお店の状況を確認すると、県外からのお客さんはほとんど無かったそうだ。嘘か誠か、都道府県をまたぐような高速道路の入り口では、検問がはられて不要不急の渡航かどうか確認されていたという話も聞かれたらしい。

 それでも福島県内の家族連れが来店してくれたり、自宅や近隣でバーベキューをするので、生の岩魚を30匹やら50匹ほしいというお客さんが夕方に重なり、岩魚をさばくのに大忙しだったということだった。

 大型連休が終わったとはいえ、この時期は山菜採りを兼ねたお客さんが顔を出すものだが、1日中東北釣堀苑の向かいでお水採りをしていても、お客さんはおろか走る車さえまばらであった。

 そんな中、お昼前になって1台の車が東北釣堀苑の駐車場に慣れた様子で滑り込んできた。中からは、まだ小学校低学年か未就学児と思われる女の子2人とそのお母さん、それにおじいちゃんとおばあちゃんが降りてきた。

 店に入るなり、釣竿を手にして岩魚が泳ぐ池へと走っていった。しばらくして、おじいちゃんが岩魚を釣り上げると、奇声を上げて跳ね回り喜ぶ女の子たちの声が静かな水の里に響き渡り、思わず笑みがこぼれてしまった。 

 お水採りが終わりに近づいた頃、お店の方から『あべちゃ~ん!?』と呼ばれたので、びっくりして振り向くと、先ほどのおじいちゃんがニコニコしながら歩み寄り、『わかるか~い?』と問いかけてきた。

 そのおじいちゃんは、僕がまだ水の里に通い始めた頃は現役の競輪選手であった古川さんだった。まあ、おじいちゃんとは言っても小学校に上がるかどうかの子のおじいちゃんなので、まだ60代半ばであり、その場に孫がいなければとてもおじいちゃんなんて呼べやしない。

 古川さんが現役を引退した後は、新白河駅のそばで六番車という居酒屋を開いていた。現役の頃から山の幸を使った今は亡き山のお母さんの料理の大ファンで、村おさ・長さんや山のお母さんと一緒に山に入っては山菜採りやキノコ狩りを行い、その処理の仕方や保存法、料理の仕方などを学んで、居酒屋でも名物料理として提供していたのだ。

 居酒屋を開業してからというもの、現役時代ほど東北釣堀苑には来られなくなったのだが、それでも旬になると山の幸を採りに時々来ていたらしい。ちょうど僕のお水採りのタイミングと合わずに、おそらく10年ぶりの再会となったわけだが、スポーツ選手らしい爽やかな笑顔は健在で、その笑顔を見るだけで嬉しかった。

 今回の新型コロナウィルス問題で営業自粛を余儀なくされたが、様々な保障が受けられそうなので、それを元手に総菜屋に鞍替えしようと計画を進めているということであった。それもやはり山の幸をふんだんに使った物を用意しているという話であった。

 2日前には、惣菜屋で使う機器が、この新型コロナウィルス問題で閉店する経堂のお店から、格安で譲り受けることができたので、取りに行ってきたところだと笑っていた。

 世界中が重い空気に包まれている昨今で、新たなチャンスと動き出しているのは何も次世代を担う若者たちだけではないんだよと、久しぶりに再会した古川さんから教えられた。今までは居酒屋だったので、帰りに寄るのはなかなか難しかったのだが、惣菜屋なら気軽に寄ることができる。惣菜屋の開店が、今から待ち遠しい。


「 オンライン飲み会 」

マ ナ 

 先日、三か月ぶりにアメリカから帰国した友人と、オンライン飲み会というのを初めて行った。

 14日間自宅待機の彼女と、病院勤務の私は、飲みに行けるめどなんてない。出発前に、昼飲みをしたのが最後で、こんな騒ぎになるなんて思っていなかった。その頃、アメリカではインフルエンザが流行っていて、アメリカ向けの予防接種を受けなくちゃねと言っていた。

 ライン電話を使っての二人だけの飲み会になった。彼女はPCにラインを入れているので、画面が大きいそうだ。私は、スマホの画面だ。まず、散らかっていない背景を探す。小ぎれいにして、観葉植物なんか置く。

 ちょっとぉ、照明が真上にきてんじゃないの、ヤバイよ。風呂上りの自分の顔なんて、カメラを通して見れたもんじゃない。日中、化粧してても、スマホのカメラの画面が不意に逆転して、自撮りになってしまった時のおののきといったら。

 そうこうしているうちに、約束の8時となった。 

 「こんばんは~」

 お互いの姿を見て、つい失笑してしまう。彼女50才、私58才。恥ずかし~、なのだ。妙な緊張感が漂う。

「何飲んでんの?食べてんの?」

 他愛ない話から始まる。会話というより、順番にお互いの話を聞いているという感じだ。相手がトイレに行ったり、冷蔵庫にビールを取りに行っている時間が、やたら長く感じる。

 それと、気が付いたのだけど、終わりの時間を決めておかないと、どこでお開きにしていいかわからなくなる。背景も変わんないし、ちょいと河岸変えてもう一軒行こかということにもならないし。 

 飲んでいるのに、くつろげない。妙な緊張感は、最後までついてまとった。

 「やっぱり、疲れるね。慣れてないせいか」

 というのが、私たちの感想だ。 


                   

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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