2022.04.03.No.636
「 高志骨折りの山菜 」
なな.
高志が山菜を採ってきてくれた。こごみとタラの芽だ。かつて頻繁に水の里へ同行し、山菜取りに興じた七菜と文は春になると水の里の山菜が恋しくなる。加えて高志の習性「強い狩猟本能」知っているだけに、ついつい収穫を心待ちにしてしまうのだ。
高志の文章にもあるが、毎年大量に採ってきてくれるこごみは今回時期が少しずれてしまったためにみな伸びきってしまったそう。あきらめてもいいくらいな状況だったと思う。
高志の背中を押したのは、連休明けでオーガニック七菜を去ることが決まったぶっち君が、とても楽しみにしていたことなのではないかと思う。車が入れない場所へ往復2時間もかけて分け入り、やっと見つけてほんの少し持って帰ってくれたこごみ。今年初めてで最後の貴重な、水の里のこごみ。今年はお客様にはふるまえず、自分たちだけでいただいた。
採れたよ!と写真を送ると翌日「楽しみすぎて早く来ちゃいました。」と、案の定の喜びよう。タラの芽のてんぷらとこごみのパスタを作ってくれた。業者経由のものしか料理したことがないと話すぶっち君。「全然違う!うまい!!」と歓声を上げていた。山菜取りにもキノコ狩りにも同行したいと熱く語るぶっち君。きっと行けるタイミングがあると思うよ。
「 大型連休はじまる!! 」
高 志
いよいよ大型連休が始まる。非常事態宣言やいわゆる”まんぼう”などの行動制限が無い大型連休は3年ぶりとのことだ。
付き合いのある飲食店はこぞってみんな『コロナ前の集客状況を思い出せないので、どれだけ仕込めば良いのかわからない』と頭を悩ませている。3年ぶりというのは、それほどの長さなのだ。
我がオーガニック七菜は、通常祝日を店休日としているのだが、今回は3~5日の祝日を営業予定なので、先の飲食店と同じように、どれだけ仕込めば良いのだろうかと頭を悩ませている。
それにしても、何という不安定な天候だろう。まあ、4月初旬に台風が日本近海を通過するくらいだから、海水温からして異常なのだろう。天気予報では、連休中もあまり芳しくないようだ。
この大型連休は最大10連休なのだそうだが、学校に通う子供たちがいるご家庭ではそうはならないよなと思っていたら、何と進の通う高校は10連休だという。七菜家と合わせて7人いる子供の中で初めて私立に通うことになったので、私立高校の実情を初めて知った。
当の進は『学校が休みになって嬉しい人なんているの?』なんて、多くの学生たちの反感を買うようなことをのたまわっていたが、本人は学校があろうが無かろうが野球の練習があるのであまり関係ないのだろう。
3月の”まんぼう”明けから、かなりの観光客が江の島・鎌倉地区に押し寄せており、配達の際もかなり渋滞が激しくなってきたので、もうそろそろみんな我慢の限界なのだろうと思っていたが、この大型連休も各交通会社の予約状況は軒並み好調のようだ。
こうした流れを全く予想していないわけがないのだから、政府もタイミングをはかっているのだろう。大方の予想では、大型連休明けに感染者数が増えるとされている。それでも、もし変動が見られなかったり、減少傾向となった暁にはいよいよ新しいステージへ移行されるのだろう。
一部国会内で、マスクを外す宣言を政府がするべきだという提言がなされたと聞く。今のところ、密になる室内を除き、特に屋外ではマスクを外すべきだとされているようだ。
この大型連休はあまり好天には恵まれなさそうだが、4月に真夏日を記録したように、この夏は暑さが厳しくなると見られている。その中でマスクをするなど、それこそ体調を崩す要因となりそうなものだ。
さて、ここのところ水の里でお水採りをしていると不思議なことに出くわしている。作業中はトランジスタラジオをつけているのだが、ラジオから流れる気象情報で関東以北において会津若松がどこよりも気温が高くなっているのだ。時には、沖縄よりも気温が高くなることもあった。
そのせいだろうか、春の山菜の代表格である”こごみ”が一気に伸びてしまった。前回のお水採りの際には、早出のこごみがようやく頭をもたげ始めたくらいだったのだが、今回見に行ったらもう完全に伸び切ってしまっていた。
こうなると、少し北部に位置する四ッ沢林道沿いを探しに行くのだが、所々にまだ雪が残っているにも関わらず、同じように伸びてしまっている”こごみ”ばかりであった。春の訪れを告げる桜しかり、山菜も一気に成長してしまうようになった。
自然の恵みをわけていただく我々にはどうすることもできないわけで、この時期を逃してしまっては、また来年まで我慢するしかない。わかってはいても、何ともやるせないものだ。.
次回は連休明けのお水採りとなるが、その際にはどんな山菜と巡り合えるのか、またウィズコロナはどういう局面を迎えているのか、その時を楽しみに、まずは連休中の配達をしっかりと務めることにしよう。
「 サウスポー・フェチ 」
上田 隆
図書館に頼んでいた本が届いたと連絡があった。蔵書が無かったので、大きな図書館から取り寄せてくれた。ネットはこんな時、確かに役に立つ。
受け取りに行く。受付にはお決まりのビニール。今じゃ、どこへ行ってもビニールで嫌になる。 司書の女性は若く、眼鏡をかけている。長髪を後ろできりりと束ねていた。依頼していた本の名前を伝えると、書類を書き始めた。左手で。
「サウスポーなんですね」
無言である。
「ヒッチコックの《鳥》という映画、ご存知ですか?」
怪訝な顔を向けた。やはり無言で。
無理もないか、60年前の映画だもんな。
「鳥が人間を襲う。怖い映画なんですよ。そのヒロインの女性、ティッピー・ヘドレンがものすごい美人。カウンターにもたれてサインするシーンがあったのです。左手で」
やはり無言だった。決めゼリフなのに~、なんだか張り合いがないなぁ~。
「60年前、中学校の映画上映会で見ました。あまりのカッコ良さにゾクッとしました」
やはり無言、目線を書類に落としている。
「ヒッチコックの名作。ぜひ、レンタルでご覧になってください」
やっと少し微笑んだようだ。うつむき加減なので、表情は読めない。
サウスポーの女性と会うたびにこの話をしている。
ティッピー・ヘドレンを調べてみたら、身長165 cm、私と一緒ではないか。しかし、例のカウンターにもたれてサインするシーンはロー・アングルから見上げていた。スレンダーで足がとてつもなく長い。10頭身に見えた。そんなことまで説明した女性から、目を輝かせる表情は見せてもらっていない。
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