No.570「完成です」「至福の瞬快」「裸足と短パン」

2019.09.28.No.570

「 完成です 」

なな.

 先週の週末に新しい看板を作りました。「野菜料理と自然食品」「2Fレンタルスペース」という文字を入れました。イメージ先行の看板は何を売っているのかわからないとのこと。誰にでも何屋さんかわかることが大切だと教えてもらいました。業者に頼んだしっかりした看板は変えようと思ったらお金が沢山かかりますが、当店の看板は私が作成するので気軽に変えられます。教えてもらったことを素直に実行してみることも長く続けていく秘訣!!やってみましょう。 

 新しい看板をあげたその日に、アラフィフのカップルがご来店。男性は外国の方。「こんなお店が茅ケ崎にあったのね~」と奥様。ベジタリアンですか?と伺うと、「私だけね」とその男性。日本語がお上手です。お二人で仲良く語り合いながらお食事をしてくださいました。看板効果でしょうか? さあ!増税です。

 増税後はどうなることでしょう??  


「 至福の瞬間 」

高 志 

 まだ酷暑著しいお盆の頃、大勢のお客さんで賑わう東北釣堀苑に、亡き山のお母さんの実弟である久さんが助っ人で来ていた。

 水場でお水採りをしている僕を確認すると、ニコニコしながら『今年は暑い日が続いているから、キノコが豊作だわい!?』といって、秋の訪れを楽しみにしていた。

 台風が過ぎたのを機に、一気に秋の風が吹き始めた水の里では、いまかいまかと待ち望んでいた山師がこぞってキノコ狩りに出かけ始めた。

 そんな矢先、郡山の自宅から水の里に通う東北釣堀苑の若旦那のとも君が、道すがら羽鳥湖のそばで”はえとりシメジ”を採ってきた。例年なら9月始めに出るキノコだけに、待ちに待ったキノコのお目見えとなったのだが、酷暑続きの豊作の際には、早目に出るのが通例なだけに、まさか今年は不作なのか、という疑心暗鬼に囚われてしまうのも仕方がないことなのかもしれない。

 さらに、いつもなら鼻高々に収穫物を片手に東北釣堀苑に集う山師たちだが、今年はまだ一人の山師も現れない。若旦那のとも君が採ってきた”はえとりシメジ”のように、時期が遅れているだけなら良いのだが、このまま一気に出ることが無く冬を迎えた年もあっただけに、今年はいかなる年なのか!? 

 先の久さんが、毎年この時期に旬を迎える”シシタケ”を採りに行った。この”シシタケ”、香茸とも呼ばれ、とても良い香りがするキノコで、化粧品にも使われることがあるらしい。

 だが、戻ってきた久さんの籠の中には、”シシタケ”ではなく”マイタケ”が入っていた。長らくその場所に通っていた久さんだが、いまだかつて”マイタケ”が出ていたことなどなく、思いもよらない収穫物にただただ驚くばかりであった。想定外の外道の登場に、嬉しくもあるのだが、肝心の”シシタケ”が出ていないのは気がかりであった。

 それでも、山を歩いて自分の目で確かめないと気が済まないのが、山師の端くれの性分。この時期、真っ先に”マイタケ”が現れる山を目指して、朝6時過ぎ、背負い籠を背に入山した。

 昨年は事故騒ぎでキノコシーズンを棒に振ってしまったので、2年ぶりの入山であったが、山の光景は新鮮で何とも不思議な思いに駆られた。

 記憶というのは曖昧なものだ。以前に登り慣れた山のはずだが、こんなにも傾斜がきつい山かと思うほど、登り始めてすぐに大粒の汗が吹き出し、息が上がってしまった。

 単なる体力の衰えかとも思い少々気落ちしたのだが、その後足が慣れてくると呼吸の乱れも収まってきたので、安心した。

 上方を見つめ、山の稜線が確認できるほどの高さにくると、原生林が広がり始める。様々な大木があるが、中でも白っぽく滑らかな表皮がいかにも女性らしいミズナラの大木の根元に”マイタケ”は顔を出す。それでも、全ての”ミズナラ”の大木に”マイタケ”が出るわけではなく、出る木を見つけるのが山師なのだ。

 出る木であっても、毎年出る木もあれば、数年に一度とてつもなく大きな”マイタケ”を生み出す木もあって、千差万別だ。

 そんな中、数ある大木の中でひと際気になる”ミズナラ”の木が目に入った。急斜面なため、山肌に身体を預けるように四つん這いになってその木にたどりつくと、株としては平均サイズである”マイタケ”が目に飛び込んできた。山師の至福の瞬間である。

 結局、今回の収穫は、他に”マイタケ”の幼菌2株と、少々残念な結果に終わったのだが、いよいよキノコシーズンの開幕を実感することができた。次回更なる収穫に期待をして、いくばくかの不安をよそに入山しよう。


「 裸足と短パン 」

上田 隆 

  今年の冬に高熱が出た。喉も痛い、体はだるい。どうやら、ただの風邪とは様子が違う。医者嫌い、病院嫌いの私だが、重い腰を上げて、近所の医院へ行った。大病院はキライ、待ち時間が長くてうんざりする。鼻の穴に綿棒を突っ込まれた。

 「インフルエンザです」

  老医師はまったく表情も変えずに言った。 

 「えーーっ、生まれて初めてです」 

 「食事は?」 

 「帰ったら食べます。私は一日二食です」  

 「そら、あかん! 人間は一日三食、食べんな」 

 無表情な老医師は、この時は頭から湯気を出していた。 

 「そない怒らんでも。一日二食の考え方もあるでしょ」 

 私はこの言葉を飲み込んだ。どうも、医者との言い争いを避けるきらいがある。 


  そして、しばらくして、今度は低温やけどをした。電気アンカを使っているが、夜中の接触で足の甲の皮がめくれるほどのひどさだった。皮膚科の医者は 

 「こら、ひどいな。二、三ヵ月はかかる」 

 私は質問したが、返答はなかった。こちらを見ようともしない。高飛車な態度、素人はだまっていろ!が顔に書いてある。仕方、ないか。化膿しないように消毒を続けるために通う。日にち薬なのだ。 

考えていたより治りが遅い。それだけ深部まで火傷がひどいのだ。6週間ほど経って、やっとかさぶたができた。それを溶かすための薬が処方された。でも、なかなか溶けない。それからは行くたびに医師はピンセットでむしろうとする。

 「センセ、痛すぎる」これも言葉にならない。”

 “湿潤療法”をアドバイスしてくれる人がいた。白色ワセリンを塗った食品用ラップフィルムを患部に固定する。今までの傷・火傷治療法とはまったく異なるやり方だ。医者に行かずとも、自分でできる、とアドバイスもされた。でも、やはりこれでいいのかな? 気になったのでネット検索して、“湿潤療法”をやっているクリニックを受診した。 

 「まったく問題ないですよ。うまくやっておられます。元々難しいやり方ではありませんし」 

 その医師はニコニコと笑いながら話された。かさぶたは、たった三日ではがれた。痛みもなく。

 ※【“湿潤療法”についてはネットに多数の記事があります。ご参考になさってください】 


  それから暑い夏がやってきた。リハビリためにプールに通っている。気安くなった人に 

 「病院情報を教えてほしい」 

 「どんな?」 

 「話しやすい医者がいい。上から目線じゃない人」 

 笑いながら答えてくれた。 

 そこへ行くとなって、気になることがある。暑くなってからは、私はずっとサンダル履きだ。クロックスのフェイク、人は偽クロックスと呼ぶ。やはり、初めての医院へ行くのなら、靴下と靴にすべきかな? でも、暑いしな。悩むのと考えるのが邪魔くさくなった。いつもの裸足に偽クロックスで行った。

  診療室のドアを開けると先生の短パンが目に飛び込んできた。裸足にクロックスを履いている。CROCSマークの純正品だ。  

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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