No.585「春だ!こごみだ!!」「奇跡のこごみ」「味噌つくり代行いたします」

2020.05.02.No585

「 春だ!こごみだ!! 」

なな.

 肌寒かった4月とは打って変わって、5月は暑くなるので熱中症に注意するようにとニュースや天気予報が伝えている。ここ数日は本当に気持ちのいい晴天が続いている。朝、カーテンを開けると、家の前のドングリの木が風に揺れて黄緑色の新芽をキラキラさせている。コロナウィルスでなんとなく重苦しい日々だが、こんなに気持ちよく晴れていると少しの間忘れさせてくれる。思わず大きく息を吸いこんでみる。 五月晴れだ。春が来た。


 そして、山から帰ってきた高志がこごみを持ってきてくれた。山菜の季節の始まりだ。山にも春が来たのだ。よちよち歩きの長女花菜を連れて山菜取りをしたことを思い出す。20年以上前のことが鮮明に思い出される。幸せな時間。

 こごみは癖がないので見た目で抵抗がなければだれでも美味しくいただける。もっと細くて小さなこごみもあるが、今回のはとってもりっぱ。こういうのは歯ごたえもあり噛むとほんのちょっとぬめりがありとても美味しい。家では天ぷら。店では天ぷらと胡麻和えにして出した。 


「 奇跡のこごみ 」

高 志

 いよいよゴールデンウィークに突入した。だが、今年ほど心湧きたつことのない連休もないだろう。水の里に通うようになってから、この大型連休を満喫したことがない僕でも、この何とも言えない重苦しさは経験のないものだ。

 かといって、実際に何かに圧し掛かられているわけでもなく、まさに”気のせい”なのにこんな調子ではいけないと、ふと思い直した。

 そんな思いで水の里に向かうと、村に数本ある桜の木が見事な花で彩られていた。桜に先導されるように、山肌の木々にも淡い新緑の葉が広がり、パステル画のような美しさに包まれていた。

 秋の紅葉も美しいけれど、この時期の新緑の彩りの方が好きだという方々が多いのも頷ける。冬のモノトーンが長いこともあって、華美な彩りよりも淡い色の方が目に優しい。そんな春の気配に誘われて、小鳥たちのさえずりが静かな水の里に響き渡っていた。

 村人たちは日の出前から畑作業に精を出し、東北釣堀苑もいよいよ本格営業の運びとなったのだが、全国的な非常事態宣言により、いつもの賑わいは見られなかった。

 そんな折、懐かしい人に声を掛けられた。亡き山のお母さんの実弟である久さんである。久さんは古くから東北釣堀苑が繁忙期となる頃に、店の助っ人として手伝いに来てくれているのだが、その他の時期でも山菜採りやキノコ狩りにやって来る。

 残念ながら、今年は手伝いがいるほどの忙しさには至ってはいないのだが、それだけに久さんが現れたということが、山菜採りの時期になったんだよという合図のようだった。

 お水採りをしている時は、人との接触は皆無に等しいのでマスクをしていない僕を見て

 『阿部ちゃん、マスクしなきゃダメだべ!?』と言って、いたずらっ子のような笑顔を向けてくれるのが嬉しかった。

 そんな久さんに促されたわけではないが、まずは山菜採りシーズンの始まりを告げる”こごみ”採りに出かけてみた。前回のお水採りの際には、まだ姿を現す気配すら無かったこごみだが、このこごみ、一度姿を現すと足が早い。まさに旬を逃すと味が格段と落ちるだけではなく、下手すると食べられなくなってしまう。

 心配とワクワク感を同居させながら、いつものポイントに足を向けてみる。そのポイントに着く手前から、ポツポツと採るに至らない小さなこごみが目につくようになってきた。

 『うわ~、駄目だ!!』思わず口からこぼれてしまった。ポイントの前からこの小さなこごみが現れるということは、ポイントでは既に旬を過ぎてしまっているからだ。

 半ばあきらめながらも、中には遅咲きのものがあるかもしれないと思い直し、足を進めた。そのポイントは一級河川の河原沿いにあるのだが、そこの様子が前回と違うことに気づく。明らかに川水の量が増えて流れた跡が残っているのだ。つまり良質のこごみが出るそのポイントが、一時川底に沈んだことを示していた。

 そのおかげで、普段であればとっくに旬が過ぎているはずなのだが、奇跡的に旬を迎えたこごみを確保することができた。

 4月から船上人となった伸が3週間ぶりに少しだけ締った姿で帰宅した。その伸にこの奇跡のこごみを出したところ、『うわ~、山を思い出すな~!?』と言いながら、美味い美味いとバクバク食べていた。

 アルバイトを始めてから、すっかりジャンクフード漬けになった伸だが、幼少期に培われた食の記憶は、しっかりと残っているもんなんだなということを教えてくれた、今回の奇跡のこごみであった。次回は、タラの芽やこしあぶらが採れると良いな!!


 

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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