No.575「ちびっ子たちにはげまされ」「空を仰いで」「学校生活」

2019.12.07.No.575

「ちびっ子たちに励まされ」

なな. 

  4月から英語で預かる保育園のお弁当を引き受けた。その仕事には毎月1回の食育の講師も含まれている。

 食育って?何をすればいいのか?40人近いちびっ子たちとの30分間。私に伝えられることは何だろう?食の大切さ、生きるための知恵?みたいなものが伝えられたらいいな。

 毎月毎月、季節にちなんだ行事や日本の文化などを紐解き、小さな子供にわかりやすいようにするには?興味を持ってもらうには?と、いろいろ考えた。

 絵本を探して読んでみたり、紙芝居をしてみたり、葉付きの野菜を用意して何の葉っぱかクイズをしたり、何種類かの素揚げの芋と生の芋を用意して、食べて当てるクイズをしたり。春に皆で仕込んだ味噌は10月に開けて味噌汁を作って飲んでみた。

 悩みながらも9回が終わった。毎月通ううちに子供たちも慣れてきて、かわるがわるに準備をのぞきにくる。中には抱きついてくる子もいる。

 可愛いな。なんだかほっこりする。 毎回何かちょっとしたものを口に出来るのも子どもたちは楽しみなようだ。 子ども目線で工夫する30分間は先生にも好評のようだ。

 日々の暮らしと店の往復で、新しいことに出会う機会はあまりなかったが、この食育の講師は思いのほか楽しい仕事となっている。

 次は1月。何をすればいいか今から考えよう。子どもたちの期待に応えられるように。あの一生懸命考えている表情を見るのを楽しみに。 


「 空を仰いで 」

高 志

  水の里では、梅雨も明けきらない頃から用水路の再整備工事が行われている。その工事個所が、東北釣堀苑の駐車場脇ということで、当初は『まるで、営業妨害じゃないか』と敵対視してもいたのだが、もうかれこれ半年近い工事ともなると、工事作業員ともすっかり顔なじみになった。

 まあ、この工事作業員とて近隣の村人たちなのだから、そもそも敵対視することもないのだが、人の感情なんてたわいもないものだ。

 ともかく、そんな工事作業員たちとも暑さ寒さを共にしてきたのだから、すっかり同士となっても不思議ではない。木々の葉も落ち、冷たい北風が吹きすさぶ年末なら尚更だ。

 気象庁からは暖冬傾向にあると発表されていても、気まぐれな寒気団は降りてくる。地元の村人たちでさえ、雨なのか雪になるのか判断しかねるほど微妙な位置を取りながら。

 そんな工事作業員たちから、何故だか親方と呼ばれるようになったのだが『親方、今日は早く峠を越えた方が良いぞ』と忠告された。今年からフリーWi-Fiを導入した東北釣堀苑の敷地内に入って天気予報を確認すると、日本海側で大雪になる恐れがあると出ている。

 太平洋側と日本海側の両サイドから影響を受けている水の里だが、近年は太平洋側からの影響が大きい。だから、天気予報を見る際には、新潟を参考にするよりも仙台を参考にする方が良い傾向にある。

 しかし、自然相手ともなるとそう簡単にはいかないもので、いかんせん気まぐれな寒気の動きが、雨にも雪にも自由自在に変えてしまう。

 村内にある気温表示計は2℃を表示していた。これまた微妙な数字で、それこそ上空の気温でいかようにも変わってしまう。

 実は前日も終日雨であったため、夜には雪に変わるだろうと思われ、翌朝恐る恐る窓の外を覗いてみたのだが、結果は良い方向に裏切られた。

 四方を囲む山々の山頂部は真っ白い帽子を被っていたのだから、一面が雪化粧になっていてもおかしくなかったわけだが、何とも運が良かったということになる。

 ちなみに、この時我が家がある湘南では16℃の快晴に包まれていたのだから、水の里における雪だの雨だのといった心配事には、全く想像すら出来なかったことだろう。

 工事作業員にあおられたわけではないが、予定本数を汲み終えると急いで水の里を出発した。水の里よりも標高が高い鳳坂峠手前でも雪化粧は見られず、まずはひと安心しながらクルマを進めると、峠を越えた辺りから雲が切れ始め、徐々にきれいな青空が広がり始めた。

 すると、お天道様が姿を現し、一気に気温が上がり始めて、あっという間に10℃を超えてしまった。水の里では防寒対策で着込んでいたため、瞬く間に汗ばむほどになってしまう。

 それでも、そんな些細な事が嬉しくて仕方がない。降り注ぐ陽射しに向かって思わず微笑んでいる自分に、おかしくなってしまったが、自然を感じながら生きるということはこういうことなのだろう。

 帰宅した翌日、近くの海浜公園でストレッチをしながら、青空のなかを流れる白い雲を眺めていると、何とも言えない清々しい気持ちになった。

 令和元年も残り3週間余りになり、否が応にも気忙しくなってきたが、それ故に空を仰ぎゆっくりと雲を眺められる幸福感。寒く厳しい水の里から帰って来ると、ここ湘南はどんなに過ごしやすいかと、改めて思わされる。犬の散歩や、遊びに来ていた子供たちの声が、時間の流れをゆっくりと感じさせてくれる。

 さあ、今年もあとわずか、空を仰ぎ見ながらがんばろう。


「 学校生活 」

マナ

またまた、学校へ通う日々が続いている。

二年前にすしの学校を卒業後、それから三度目の職場でやっとこさ、カウンターの片隅でカッパ巻きを巻かせてもらえるようになったと思いきや、左手が痺れて働けなくなってしまった。

はてさて、こんな左手で出来る仕事ってあるんだろうか。

リハビリに通うある日、二十代後半の理学療法士の先生と世間話をしていた。

先生のお母さんが通販のコールセンターで勤めているという。

「やらはったらどうですか」と言ってくれる。お母さんて、私くらいの歳かな。

「でも、こわいお客さんに難癖つけられたりするんでしょ」

「いや、そういう時は上の人が替ってくれるんですよ」

 「あの、しゃべりながらPCに打ち込んだりするんですよね」

 「まあ、そうですね。でも、打ち込むってゆうても簡単なことだけですよ」

その、簡単なことが…。

そんなときにハローワークに用事ができて、行ってみると、職業訓練の募集が出ていた。 説明を受けて、とんとん拍子に医療英語の三ヶ月コースに行くことになった。

学校は楽しい。宿題もあって結構忙しい。単語帳なんか作って電車のなかでながめていると、学生気分になる。この歳で、勉強するということが、どんなことかも覚悟している。それはわかっている。

ところが、想定外のことで、今、頭を悩ませている。

この訓練には盲点が二つあった。まず、恐れていたPCだ。

発表もグループワークも、パワーポイントを使うのだ。

だいたい私のPCにパワーポイントなんかついてないし、具体的に何するツールなのかも知らなかった。図書館で本を借りてきて、ユーチューブで「パワポの使い方」の動画を見て、作成している。

これが、結構大変で、英語の勉強以前でつまずいている。


それと、もう一つ盲点があった。

医療英語なので、人体解剖図やらもある。

赤や青の血管が全身を網羅してる、アレ。各パーツも鮮明に描かれている。写真まである。 教科書も気色悪いし、病気や怪我の説明も、それはおっかない。

白内障の手術のスライドをやるらしいけど、毎回、必ず気分が悪くなる人が出るそうだ。

私は怖がりで、そもそもスリルを楽しむという感覚が理解できない。

スキーでも車でもスピードは苦痛でしかない。お金を払って、ジェットコースターに乗る人の気がしれない。バンジージャンプに至ってはお金をもらってもいやだ。ホラーやスプラッター映画も観たくない。

それが、手術の動画やスライドを観なくていけないなんて。

トラウマになったらどうしよう、休もうか、いや、教室内暗くなるから観てるふりして目をつぶっておこうかなどと、根性のない考えが頭のなかをさまよっている。

これ、割と本気で悩んでいる。

  

ラ・ラビアータたより

都会の子供に美味しい山の湧水を飲ませたい。1995年、友人の言葉をきっかけに、会員制で南会津の湧水を宅配し始めてから月2回のペースで発行を続けているLettela L'Arrabbiata/ラ・ラビアータたより。オーガニック七菜の日々がつづられている。水の里、キャンプ、イベント、出産/子育て、開店、ケータリング、料理…過去から現在まで、七菜の歴史である

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